執務事例集 B5版386頁
昭和61年2月25日発行
目次
発刊に当たって
静岡県学校保健会・小中学校養護教員部会会長 川崎 カツ子
「一隅を照らす」
静岡県教育委員会体育保健課長 斉藤 欣三
監修を終えて
文部省体育局学校保健課専門員 出井 美智子
静岡県教育委員会体育保健課前指導主事(現清水町立清水小学校教頭) 鈴木 天
静岡県袋井市立袋井中学校前養護教諭(現袋井市教育委員会社会教育指導員) 名倉 美智江
T 第1章 学校保健と養護教諭
1 期待される養護教諭
2 養護教諭の職務
3 学校保健と職務との関連
4 学校保健活動のすすめ方
5 学校保健にかかわる職員,関連機関との連携
U 第2章 保健管理
1 環境衛生
2 健康診断
3 健康観察
4 救急処置
5 児童・生徒に多くみられる疾病異常の予防
6 学校において予防すべき伝染病
7 学校給食
8 健康相談
9 家庭訪問
10 児童・生徒理解
11 健康に適した日課
12 休憩時の運動や遊び
13 健康安全生活状況の把握
V 第3章 保健安全教育
1 体育科・保健体育科の保健学習
2 関連教科における保健安全指導
3 学級指導における保健指導
4 学校行事における保健指導
5 児童・生徒活動における保健指導
6 教育活動全般における保健指導(常時指導)
7 安全指導
8 性に関する指導
9 個別指導
W 第4章 組織活動
1 学校保健委員会
2 校内組織
3 関係機関の協力
X 第5章 効果をあげるための手だて
1 資料の収集と活用
2 保健統計
3 学校に於ける健康情報活動
4 教育機器
Y 第6章 評価
1 学校保健活動の評価
2 職務の評価
3 評価の方法
4 評価の活用
参考著書
発刊に当たって 静岡県学校保健会・小中学校養護教員部会会長 川崎 カツ子
養護教諭の専門性の確立とか専門職としての養護教諭にもとめられるものとかいった議論は,これまでにも,さまざまなかたちでなされてきました。私たちは,教育の現場で直接,児童・生徒の健康問題にかかわる仕事をしているわけですが,近年における児童生徒の心身の状況の著しい変化にともなって,養護教諭の執務内容も多岐多様にわたっています。それだけ,ともすると毎日の仕事に追われ,考える暇もなく流されてしまったり,慣れからくる安易さのために自分自身の方向性を見失いやすいという一面のあることも否定できません。
健康問題は生涯教育の基本であるといわれます。保健室を中心として展開される学校保健の諸活動を通して,養護教諭にとって何が本質的な仕事なのか,養護教諭にとって欠くことのできない執務の基本は何なのかを明確にし,日常の執務の見直しをしていくことも,児童・生徒の健康の担い手としての養護教諭の重要な課題と言えましょう。
養護教諭執務事例集の編さんは,前会長・袴田はる子先生の就任と同時に計画され,足かけ4年もの歳月を費やしてようやく発刊のはこびとなったものであります。経験豊かな先生は,これまでの自分の執務をみつめ直し,経験の浅い先生は,これからの執務をより有効なものとするために,それぞれ御活用いただきたいと思います。
学校保健・安全の活動には限りない問題があります。その課題解決をはかるためには今日の成果をフィードバックし,評価を重ね,日々の実践を積み上げるとともに,児童・生徒の生涯における健康をめざし,学校保健に携わっていることの喜びと意義を認識し,その責務に精進したいものです。
最後になりましたが,公私共に御多忙の中,監修をお引き受けくださいました3人の先生方,惜しみなく研究資料を提供してくださった会員の皆さま,4年もの長い間ご尽力くださった袴田先生,膨大な資料の山に取り組みながら編集を続けてくださった責任者の林先生をはじめとする編集委員の皆さま,この事例集発刊のためにお世話になりました関係各機関の皆さまに深く感謝の意を表し厚くお礼を申し上げます。
「一隅を照らす」 静岡県教育委員会体育保健課長 斉藤 欣三
われわれを取り巻く社会環境の変化は著しく,何人もその影響から免れることはできませんし,また,多くの生活課題や教育的課題も持つようになりました。なかでも学校保健関係者にとって,児童・生徒の心身の健康問題は未来にかかわる重大事であり,しっかり対処していかなければなりません。教育は常に未来に向けた営みであり,私どもが目指す「心身共に健康でたくましい児童生徒の育成」は,時代をこえて変わることがない不易の課題でもあります。さらに力強い歩みを続けていただきたいと思います。
21世紀に向かって人びとの健康への関心はますます高まっています。人びとが人間として主体的に,かつ豊かに生きていくためには,その基盤となる健康の重要性は問うまでもないことです。なかには21世紀のステータス・シンボルは“健康”であると提言する人もいるようです。社会状況の変化がますます激しくなるなかで,これからの学校保健,健康教育は,従来のような保健管理,保健教育だけを考えていれば事足れりということだけではすまされません。小学校におけるそれは,就学前の状況把握はもちろん,家庭の両親,祖父母の健康歴,家庭環境をも含めたものが必要となっています。中学校期は小学校期をふまえ,小・中学校期から高校期へと,さらに卒業後の保健へと,生涯を見通した健康づくりを目途として,一貫性をもった系統的な学校保健,健康教育でありたいと思うのです。養護教諭への期待はこれからもますます高まる中で,今回の執務事例集の発刊はまさに自宜を得たものであり,敬意を表したいと思います。この冊子を一人ひとりが座右の書として活用する傍ら,実践を通した事例を自分なりに書加え,それぞれが増補改訂版を作っていったならばさらに価値の高いものになることは確実です。日々の実務と研さんの積み上げによって学校の中で「一隅を照らす」人が少しでも増えることを期待してやみません。
「一隅を照らす」とは,伝教大師の“山家学生式”の一節の「照千一隅」からのことばです。
「国宝とは何物ぞ,宝とは道心なり,道心あるの人を名づけて国宝となる。…一隅を照らす此れ則ち国宝なり。」と教えています。国の宝とは財宝のようなものでなく,人間の心根である。心根のある人こそ国の宝である。人間の値打ちは身分や地位等によって評価されるものでなく,どんな立場にあっても与えられたポストにベストを尽し,周囲を明るくするようないわゆる「一隅を照らす」人こそ本当の意味の立派な人であり,国の宝であるということです。
監修を終えて
文部省体育局学校保健課専門員 出井 美智子
静岡県教育委員会体育保健課前指導主事(現清水町立清水小学校教頭) 鈴木 天
静岡県袋井市立袋井中学校前養護教諭(現袋井市教育委員会社会教育指導員) 名倉 美智江
「事例集」の発刊を,心からお喜び申し上げます。
役員・地区代表の方々の熱意によって,県内各地の養護教諭の実践が,事例集として,冊子にまとめられることは,静岡県下の学校保健の充実・推進を願うとき,大きな意義があるように思います。
原稿に目を通させていただき,先生方が,汗と涙の中で,力強く情熱的に活動されている姿を感じました。そして,そのご苦労に頭が下がるとともに,すばらしい実践の記録がここにあると思いました。
さて,昨今,教育問題が社会的にも大きく取り上げられている中で,養護教諭には,高い専門性に加え,教職性の資質の向上が問われていますが,このことは,学校保健を,より教育的に推進する大切な役割が養護教諭に課せられており,その期待への高まりの結果でもあろうかと思われます。この様な現状から,養護教諭の職務の重要さに鑑み,養護教諭のあり方について,ごく身近な問題として今後努力してほしい点を3点ほど申しのべて,監修を終えての感想にかえさせていただきます。
(1)「学校(教育)の中で,新しい対応力・教育力を備えた養護教諭として,どう自己実現をしていくのか」を常に自らに問いかけていく。
(2)「学校保健の仕事だけが養護教諭としての私のすべて」という主観的認識を捨て,広い視野に立って「学校保健は,学校教育の中の一分野であり,事項の学校教育活動全体のバランスの中で推進していくもの」という客観的認識をもつ。
(3)多くの教師と連携して仕事を進める中にこそ,養護教諭の高い専門性が生かされることを知る。
これからも,このような事例集が発刊されることがありました折りには,保健主事,学級担任,保健体育担当教員,そのた関係者との協同による研究や実践事例が数多く,その中に盛り込まれているよう念願すると共に,県下の養護教諭の皆様の御健斗を心より御祈りいたします。
昭和57年度から始まった執務事例集の編集が終わり,ようやく発刊の運びとなりました。文部省の出井先生をはじめ,県教育委員会,保健会,各保健機関,諸学校の先生方には,多大なご指導,ご協力をいただき,誠にありがとうございました。深く感謝申し上げます。
養護教諭の執務は,養護教諭個人の人格や,理念や,実践力などで,独創的な保健活動が,推進されていますが,更に,執務を効果的に実践する方法を模索している現状です。
この執務事例集は,静岡県内,小,中,養護学校に勤務する養護教諭の実践記録の中から抽出し,掲載したものです。実践記録は,執務の足跡であると共に,前進するための足固めでもあります。
この執務事例集を,足がかりとして,より確かな学校保健の実践がすすめられれば幸いです。
編集委員
○川崎カツ子 林典子 袴田はる子 川口保代 石川百代 水口愛子 金澤美代子 長谷川玲子 漆畑洋子 佐藤實佐子 瀬古竹子